ユニカイエ

日本世間学会の巻〈3〉

インタビューや雑談をお届けするひるますの気まぐれコーナーですが、これまでユニ通信Vol.4、ユニ通信Vol.11で「日本世間学会」の研究発表の模様をレポートしてきまして、恒例となってしまった観もあるので、ひきつづきこの11月6日に開催された第12回大会のレポートを掲載したいと思います。

 今回も前回同様、神田神保町の岩波セミナールームにて開催、30名前後の参加でまたまた盛り上がりました。今回もたくさんの見学参加や問い合わせがあり、下段コラムでも紹介しているように、いろいろなメディアで露出が多くなってる世間学会(おもに佐藤直樹さんによるものだが)。さすがに「流行語大賞」をとるには至らなかったものの、これからもどんどん関心の環は広がっていきそうだ。
 さて肝心の研究発表だが、まず一人目、元・大妻女子大学教授の東方淑雄さん。テーマは「世界には社会福祉という政策はない」。いっけん「世間」とは何の関係もない話にみえるが、これが深くかかわってくるから面 白い。
  タイトルの意味は、世界の、日本以外の国では社会福祉という政策」がない、つまり「社会福祉という政策」をもっているのは日本だけということになる。文字どおり読めば、日本だけが社会福祉というものをやっていて、すごい!ともとられそうだが、もちろんそんなハズはないということは、誰でも思うだろう。つまり東方さんの言うのは「政策」という、いわば対処療法的レベルで「社会福祉」ということをやっている国は日本だけだという、むしろ「批判」だ。
  では、世界各国、というかいわゆる「先進国」ではどうなっているのか、というと、「社会福祉」は「政策」ではなく、むしろ「国家」がそのために存在しているかのごとき根本的目的みたいなものだということになる。西欧において(というべきだと思うが)資本主義社会が形成され、民主主義国家がつくられる過程において、すべての人の最低限の生活を保障する(それによって総体としての社会−経済を安定させる)ことが国家というものの課題になった。というよりむしろ、その目的を行うためにこそ、人々は「目的意識をもって」国家を作った(すでにあった国家というものを、そのようなものとして改作した)といえるのだろう。
 この話が、日本には「個人が契約してつくる社会」というものがない、という世間学のテーマと非常にパラレルなものだということは、世間学をかじった人なら?すぐにピンとくるところだと思う。日本においては、そのような意味での福祉を行う目的意識においての「国家」というものはない。ようするに日本は西欧的な意味での「国家」がない。これでは民主主義がど〜のとか選挙がど〜のと言ってもそもそも根付くはずがない。
 日本人にとっては、世間とか空気と同じ意味でまず「なんとなく国家」があるのだろう。自らの意志で国家をつくるということには程遠く、福祉もただ国や自治体が「お役所の仕事」だからといってこなしている…。そもそも国家とは何なんだ〜というところまで、深く関わってくる東方さんの視点。これからどんどん展開していってほしいところだ。
 二人目は岩手の療養施設で歯科医師をしている伊師正男さん。「私は世間とどう格闘しているのか」というテーマでの報告。こちらの報告は歯科医師といういわばインテリ(伊師さんはそういう言い方はしていないが)の伊師さんが、ほとんど「知」というところからは縁遠い山村で家族とともに暮らしていくにあたって、周囲の世間との確執を赤裸々にレポート、というとなにやらキナくさい話しに聞こえるが、伊師さんのは単に世間と喧嘩するのでなく(それならむしろ話は簡単)、世間の中で「自分を失うことなく」、しかも世間から排除されることなく、家族も幸せに生きていくということ。そういうことのすべてを含めて「格闘」という表現をされているのが感動的だ。
 伊師さんがその格闘の一例として話されたのが、果樹栽培の話。農村地帯の人々は「知」というものを軽視していて、いくら本の知識があってもなかなか信用してもらえない。そこで伊師さんはもともとの果 樹栽培好きをいかして、「知識」によってどれだけおいしい果物がつくれるか、ということを実行して、近隣の農家の人々を納得させたのだという。実際、いま収穫された伊師さん作の「ぶどう」が会場で配られ、参加者のみなさんも世間の「味」をひととき噛み締めたのであった…、いや実際、伊師さんのぶどうは非常に甘く、おいしかったです(笑) 。
 そんな和やかな雰囲気の中、発表も終了、今回は懇親会までの時間ぎりぎりまで会場を押さえていたので、全員の自己紹介などもひさびさにやり、参加者のみなさんの「世間」に対する考えにまたいろいろと発見させられました。次回がまた楽しみである。今回はユニの仕事が強烈に忙しい時期に重なってしまったので、受付が終了した時点でKAOさんは仕事に戻らざるをえなかったので、この発表を直にきくことができず、非常に残念がっておりました。次回はどーんとユニを休業にして(笑)、世間学会に全力をそそぐ所存です。
 なお 世間学会や佐藤さんの本など、お問い合わせはユニまで!

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第12回研究大会会場(岩波セミナールーム)。
前回にひきつづきお世話になりました〜。


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一人目の発表者、東方淑雄さん


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二人目の発表は岩手から来た伊師さん。


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阿部謹也氏。いつもながら鋭い質議応答で会場は盛り上がります。

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受付終了〜これから事務所もどって仕事です!

 
◆世間学会関連情報

実は大会の一週間前、フジテレビの早朝番組「週刊フジテレビ批評」に出演していた佐藤直樹氏。テーマは「テレビは「世間」をどう伝えるか」。「世間」という捉え方にあまり納得できないという向坂アナと意見の交換がなされ、白熱した30分でした。また、佐藤氏は『婦人公論』の12月7日号「人生相談スペシャル」の中でインタビュー記事で登場。人生相談部分は鹿島茂、橋本治といったメンバー。


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2004年12月05日 07:20 by hirumas | トラックバック (0)

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