

ひるますHOTLINEは、インタビューや雑談をお届けするひるますの気まぐれコーナー。今回も、さしち対談の第2弾は保留のままなので、別ネタをお送りしたいと思います。
と、いうことでこの辺で一度書いておかねばならないのが、なんつっても「クラシック映画」。 というのもユニとしても仕事でクラシック映画にいろいろと関わってますが、なかなかそれを話題にする機会がなかった。前にユニ通 信でもちらっと書いたように、この仕事が最近、ひと段落したので、ちょうどいい機会。ワタシとしても、なんと100作品のクラシック映画を見たことになる。(しかし、考えてみれば一時期にこんだけの映画を見るというのも、学生のころ以来ですね〜)
私としては、どんどんクラシック映画を流行らせて、みんなに見ていただきたい。クラシック映画の良さ、魅力というと、これは「ナカミ」が充実している、というそのことにつきる。 まあひとくちにクラシックといっても、いろいろなジャンルや年代のものがあるわけで、ひとまとめにすることはできないが、結局は
1 脚本が充実している
2 俳優の魅力と演出力が充実
3 映像的にすばらしい
の三つの要素が、どれも満足のいくレベルになっていて、それゆえ「古典」として残されているということが言えると思う。
ちなみに僕がここでいうクラシック映画というのは、1930年代後半(つまりトーキー作品になってから)から1950年代(つまりいわゆるニューシネマ登場以前)までの映画の中で、繰り返し鑑賞にたえる、あるいは後世の人にも見てもらいたいもの、として記憶されている作品であって、「古ければよい」というものではない。一部には「単に古い」だけの作品についてのウンチクを垂れ流して「クラシック映画ファン」と称している人もいる(それが悪いとはいわん)ので、一応断っておきたい。
現代の映画がダメ、ということではないが、このポイントの中では、1の脚本の力が落ちてるだろう。だいたいCGと訳者の演技でなんとか強引に作品にしてるって感じのが多い。いい脚本というと、ナイト・シャマランあたりのどこかでどんでん返しの「仕掛け」があるようなもの、というイメージが強いが、それはちょっと違う(シャマランさんの脚本が悪いというわけではないが)。そうではなく、語るべきことをズバッとストーリーとして語ることができてるか、どうか。それが脚本の出来なわけで、そのへんがクラシック映画の方がしっかりしてると思うのだ。リメイクが流行るのもそのせいだろう。
そんなわけで、この一年でみたクラシック映画から、私のベスト10をあげておきましょう。
01 幽霊と未亡人 監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
ある未亡人が引っ越してきた家に幽霊がいてひと騒動…というコメディ。と、思ってみてると、じわじわと情感たっぷりの恋愛ドラマになってきて、泣かせます。というか、いま思い出してみるだけで、涙腺がゆるむ(笑)。音楽がゴシックホラ−調というか、荘厳な感じで、この恋愛の「時」を永遠の神話のように感じさせます。主演は「ローラ殺人事件」のジーン・ティアニーで、超美人です。
02 毒薬と老嬢 監督 フランク・キャプラ
フランク・キャプラといったら、コメディの巨匠とは知ってましたが、こんなすごいコメディを作ってたとは…。はずかしながら、作品自体しりませんでした…。と、私がいうほど、この作品を知らないのは恥ずかしい。しつこいようですが、そういう大傑作で、いま見ると、まったく隙がないほど、全編が教科書。主演のケーリー・グラントは、まじめなオジさん俳優というイメージが強かったが、この作品や「赤ちゃん教育」などみると、コメディアンとしての方が面 白い人です。
03 郵便配達は2度ベルを鳴らす 監督 テイ・ガーネット
郵便…というと、ジャックニコルソンの新しめバージョンや、ヴィスコンティのが有名(未見)ですが、これ、今回見たサスペンスの中では最高によかった。不倫でダンナを殺すもの…というと他に「深夜の告白」もあるが、やはりこちらがおすすめ。なんというか、リアルといえばそれまでだけど、人間が生きていく上で、なんとなくそうなってしまう、というあり方と、それが分かっていることからくる「イライラ」というか、そういうものがすごくうまく描かれているのだ。俳優もいい。ラナ・ターナーは美人すぎ。1946年作品にして、すでに超ミニで登場(笑)。
04 サボタージュ 監督 ヒッチコック
サスペンスではかなりヒッチ作品も見ましたが、個人的にはこのサポタージュがお気に入りです。ヒッチコックというと、「裏窓」や「北北西に進路をとれ」とかの後期のカチッとしたストーリーのある映画表現を思いうかべるが、このころのはものすごく前衛的な映像表現。後できいたら、初期のヒッチは「表現主義」に影響されていたんだとか。そんなわけで、ヒッチコックのちょっとストーリーを無視したような幻想的な映像表現がふんだんに使われています。ざらっとした映像の感触が初期のフリッツ・ラングとか、近いところでいうとリンチの「イレイザーヘッド」みたいです。それで思い出すのは、このころのヒッチのやたらエッチな表現の多用(「恐喝」や「バルカン超特急」など)。この時代にいいのかよ、というくらい、意味もなく女優が脱ぎ出します(下着レベルだけど)。ヒッチってこ〜いう人だったのか?、と驚くとともに、そのままんまそのころのヒッチが現代にやってきたら、リンチみたいな作家になっていただろうな…って感じ。肝心のストーリーの方ですが、これもかなり泣けます。自分の人生を考えずに生きてきたような主婦が、自分の幸せを見つける物語、なんだけど、そこには失うものがものすごく多い。しかしそれを暖かく見守る視線が感じられて、それが救いになっている。傑作です。
05 肉弾鬼中隊 監督 ジョン・フォード
タイトルがすごすぎ(笑)。原題はロストパトロールで、砂漠の中で孤立した中隊が水を求めてさまよいながら、敵の狙撃兵にひとりまたひとりと殺されていき、ついにはただひとりまで減っていく…という戦争サバイバルもの、という感じの今でもありそうなドラマです。今回みた中では「駅馬車」や「荒野の決闘」「我が谷は緑なりき」「怒りの葡萄」など、ジョン・フォード作品はたくさんあって、いうまでもなくすべていい。誰か映画監督が「尊敬する監督を3人あげてください」と言われて「ジョン・フォード、ジョン・フォード、ジョン・フォード」といったとかいう話を聞いたことがあるが、誰だったか?、ひょっとして黒沢明か。ちなみにこの作品、いかにも「七人の侍」なシーンがあります。
06 コレヒドール戦記 監督 ジョン・フォード
ジョン・フォードの戦争映画では、これもいいです。これは大平洋戦争の初期にアメリカが日本軍にやられまくっていたころの話を描いていて、やたら暗い。戦争が終わってから、こんな映画をわざわざ作ってるんだからすごいですが、敗色濃厚なじりじりとした感じ、そんな状況の中でも、ジョン・フォードの、いつも変わることのない「空」がぽか〜んと描かれている。なんとも切ないです。
07 独裁者 監督 チャップリン
コメディでは私はチャップリンではなくマルクス主義者なので、あまり好んで見ていなかったのだが、今回みた中では「街の灯」も「モダンタイムス」もかなりおもしろかった。そんな中で「独裁者」がすごいのは、コメディじゃないというところ(笑)。コメディタッチにはなってるけど、その語り口はず〜っとリアリティをたもっていて、これはストーリー映画として、すごいと思った。なんか今までのポスターとかの影響だと思うけど、チャップリンがヒトラーのまねしてバカにしているだけの映画っていう印象が強いでしょう 。
08 グレートワルツ 監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ
俺がまさか音楽映画を楽しめるとは思わなかったが、これはおもしろい。ヨハンシュトラウス2世の伝記映画という触れ込みだが、とある解説によると、まったく事実ではなく、シュトラウスの音楽をつかってミュージカルを作るというのが基本路線なのだとか。それはともかく、たしかに前半のシュトラウス楽団、突如、クレージーキャッツのごときコミックバンドと化して会場を盛り上げるなど、信じられないシーンもたくさんあります(笑)、後半は、歌姫との恋愛で、これが面 白い。ともに創造する喜びがどれだけ素晴らしいものかをこの映画は教えてくれる。二人が離ればなれになってしまうのは、時代ゆえの制約ということなのか。
09 アフリカの女王 監督 ジョン・ヒューストン
「カサブランカ」も「三つ数えろ」もあるので、ボギー作品もなんか入れねば、と思ったが、ひとつ選ぶならこれか。このタイトル、アフリカの女王はボギーが乗ってる郵便船の名前なので、ここには別 にアフリカ人の女酋長とかは出てきません(笑)。しかしとある海外のビデオパッケージでは、主演のキャサリン・ヘッバーンの顔が、いかにもアフリカ人の女王みたいにイラストで描かれていて笑えた。ストーリーはアフリカの植民地でナチが侵攻してきて、そこから逃れたボギーとキャサリンが珍道中をくりひろげつつ、ナチと戦うというもの。なんかインディージョーンズを連想してしまうくらい、今でも新しい映画として楽しめそうな娯楽作品。俺的には、ボキーはオードリー・ヘップバーンとの「サブリナ」がいい。
10 ピグマリオン 監督 アンソニー・アスクィス、レスリー・ハワード
そのオードリーの「マイファエレディ」の元になった(ミュージカルではないバージョンの)映画がこれ。ただし主演女優はオードリーとは似ても似つかぬ …。おどろきの原作者がバーナードショウとは始めて知った。レスリーハワードの「教授」が、自分が(田舎者からレディへと)作り替えた女に恋をする。ここにもともに創造することの喜びが恋に転化する心性が描かれる。それにしても関係ないが、この映画のレスリーハワード、まるでウディ・アレンそのもの。ラストのレコード聞いてるところは「マンハッタン」のラストを思い出すな。
番外 サンセット大通り 監督 ビリー・ワイルダー
ということでビリー・ワイルダ。これはあまり俺的におすすめはしないのだが、必見作品であることはまちがいない。これと同じ意味あいの作品に「市民ケーン」がある。ようするに傑作、といわれているが、見ててなにが心に訴えかけるのかよく分からない。どちらかというと、主人公が悲劇におちいったとしても身から出たサビという感じで共感できないのだ。いえるのは、こういった映画についての映画(メタ映画)がすでにこのときに作られ、映画というものはここで完成してるのだな〜ということ。

レンタルショップのクラシック映画コーナーにずらりと並んだ作品たち
2004年08月05日 07:32 by hirumas | トラックバック (0)
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