ユニカイエ

オムレットって何なんだ〜!の巻

ひるますHOTLINE第6回。今回はネタもないので?、ひるますの『オムレット』を紹介してみましょう。ていうか、このところKAOと共同でデザインしたり、文章を練ったり、企画を考えたりしてて、一緒に実感することが多いのが、人はすでにある文化の中で、それぞれに自分を変えながら、新しいモノゴトをつくり出し、それでまた文化を変えていくのだなあってこと。ところで考えてみると、そういうことって、まさに『オムレット』で語ってたことでもあったのだった。まあ当たり前といえば当たり前の、でも不思議な人間の「創造」の仕組み。そんなことがテーマのマンガだったのです。。
 しかし『オムレット』は、そういうふうにはあまり受け取られてなくて(笑)、なにやらわけの分からん難しいことをさらに分かりにくく描いてるマンガだ、などと思われることが多い。今回は、先月号でもお知らせしたように、『オムレット』の登場人物が活躍する「伊丹堂対話シリーズ」が「黒猫房」で再開するということもあるし、この機会に『オムレット』って何なんだ〜ってのを振り返ってみたいと思う次第であります。

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『オムレット』(広英社刊)

【ストーリー】
 主人公伊丹アヤコは二十歳の大学生。ある日、とつぜん未来からやってきたロボットのオムレットにつきあわされて「心はどこにあるのか?」を探すハメに…。
 オムレットは未来社会でセベットという科学者によって作られた人工知能。ゼベットに心は「過去の世界にある」といわれてタイムマシンでやってきたのだ。
 オムレットがなんでこの伊丹アヤコの家にやってきたのかは、この世界にやってきた時に一部のメモリが壊れたため、分からなくなってしまったのだが、なぜかアヤコのまわりにはその手の話をしたがる人物があらわれて、次第に「心とは何か」という謎がときあかされていくわけです。それを語るのはアヤコと同じ大学のバカセくん、珠緒さん、そしてアヤコの祖父であり古書店を営む伊丹堂、そして謎の人物・肥留間氏など。。
 その間にも未来世界では「人工知能禁止」などの動きがあり、ゼベットが逮捕されるなどいろいろとSFちっくにストーリーが展開したりします(笑)。けっこうラストに向けてのSF的ストーリーはそれだけでも面 白いかも(ラストも泣けるな〜)。

【内容】
 第1章「心のありか」は、心がどこにあるかって話をめぐって、まず哲学科の学生バカセくんが、それこそ常識的な心の説明をいろいろと試みます。脳科学・神経科学的な話ではなかなか説明がつかず、かといって「哲学」っほく考えても袋小路に入ってしまいます。そこに肥留間氏が登場して生命論的な考えを語り、「とりあえずのスタート地点」を示すことになります。

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『オムレット』第1章より

 第2章は「心とからだのラプソディ」ここでは、いわゆる身体論について考えてます。すでにここで、件の、人がある文化的な環境の中で、自分を変えて、その土台の上で、新しい創造を行って環境を作り替えていく、という全体のテーマがあらわれてます。ここではそれを「身体」に限定してとりあえず語っていくわけです。このへんは、ひるますの傾倒する栗本慎一郎=マイケル・ポランニーの暗黙知の考え方をほとんど踏襲してますね。
 第3章「自分って何なんだ〜」。ここは自分はどういう人かということではなくて、自分そのものとは何か?ってことを考える、この本の中では「いわゆる哲学」にいちばん近いところでしょうか。したがって、肥留間氏は登場せず、哲学ずきのバカセくんと珠緒さんだけで話がすすんでます。全体のテーマとかかわるところでは、珠緒さんの話の後半で、自分そのものってのは、実はなくて、いろいろん関わりの中で、あとから振り返ったときに「自分」ってものが見えてくるのだ、という話になるところでしょうか。
 第4章「意味と情熱」が、この本の中心といえるところで、第2章で語られた身体の暗黙知を、こんどは思考や言語、ひいては文化という場面 に当てはめて考えていきます。ここで重要になるのが、コトの創造という概念。人はコトという形で、他人にも分かる形に言葉や行動をつくりだすことでリアリティを得る。すでにある文化やできあがっている自分を土台にして新たな創造をしつつ、文化や自分を変えていくという循環的な構造が、コトの創造をキーワードにときあかされていくわけですね〜。

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『オムレット』第4章より

 第5章「心と世界をつなぐもの」は、いちおうオマケで2本立てになってます。理屈というか、哲学的に人の創造の仕組みみたいなものを語ったあとで、ではどのように人は成長していくのかを、精神分析的なストーリー仕立てにした「成長のスタッカート」。ここは例の少年カフカが主役となってるとこです(笑)。そして社会とはなにかということを、やはりコトの創造をキーワードにして解読した「社会のダンス、Shall,we?」(しかし、俺ってタイトルのつけかたがうまいな、笑)。


 『オムレット』はそれで終わるわけではなくて、第5章ではおまけだった社会の問題と倫理の問題を第2部として、そして美の問題を第3部として予定してたのですが、その概要はすでに伊丹堂の対話シリーズとして、前号で紹介した「La Vue」に発表しました(黒猫房ホームページ)。それ以外にもひるますのホームページや、やはり黒猫房さんの「カルチャーレビュー」などに『オムレット』の続きといえるものが掲載されてますので探してご覧ください。

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「La Vue」掲載の伊丹堂シリーズ

 そしていよいよ、4月より「カルチャーレビュー」に伊丹堂の新シリーズが連載。マンガの方もいろいろ製作予定になってますので、ご期待くださいませ。
 なおユニでも『オムレット』を販売しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
↓アマゾンでも購入できます。


2004年02月05日 13:52 by hirumas | トラックバック (0)

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